もず
先ほどは取り乱しまして失礼いたしました。
(あんまり嬉しかったものでつい。)
今日、会社の前の駐車場に出たら、正面の電線にモズがとまっていた。
モズは雀より大きく、鳩よりは小さい鳥である。
とまっているのはオスのモズで、あの良く響く声でしきりに何かを呼んでいる。
ヒヨドリのそれほど甲高くなく、メジロほどか細くない。
そんなに大きな鳥ではないけど、ちょっと威厳があるように見えるのはどうしてだろう。
そういえば、もう「はやにえ」の時期だなあ。
(教科書で習ったの覚えてる?)
去年の冬、雪が降って道路にできそこないのかき氷がたくさんあったとき、
メスのモズが道路の上に足を納めて座っていた。
思わず車を止めて、「こんなとこにいたら轢かれてしまうよ」といって、車に乗せた。
両手で後ろからそっと抱いたとき何の抵抗もなかった。
車の中のゴミ箱に足をかけて、ちゃんとじっとおとなしく乗っていた。
誘拐だなあ。
そう思いながら家につれて帰った。
モズは肉食なのだけど、冬の時期は餌になるカエルも虫たちも殆どいない。
魚なら良かろうかと思って、キングサーモンなど試してみるけど見向きもされない。
(塩鮭は塩分濃いのでNG)
水は無理やりスポイトで口の近くに持っていくと、なんとかなめるように飲むのだけど、食べ物は食べてくれない。
紙の箱の中に、細かくした新聞紙をひいてそっと座らせる。
震えてはいない。目や毛づやからもまだひどい病気ではなさそうだ。
軽く飛ぶけれども、ばたばたとは飛ばない。
そのまま一晩を過ごした。
翌日はすこし元気になったようだったが、まだ箱の中でおとなしくしている。
その日は暖かく、前日の雪はすっかり溶けて、もう道路は乾いてしまっていた。
もしかしたらと思い、モズを指にのせて外に出た。
家の前のクスノキを見せてやると、そのままクスノキに飛んでとまり、
ちょっとこちらを見た後、山の方へ普通に飛んでいった。
指の上に残る、重さの感触。
モズの役に立てたかはわからないけど、それから私はとてもモズが好きである。
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